タイ・バンコク移住の6つのリアル【家族移住の心構えと本音】

家族で海外移住を考えている方にとって、「いつも憧れていた海外生活」と現実とのギャップは思いのほか大きいものです。タイ・バンコクへの移住は、楽しい異文化体験やゆるやかな暮らしの一面がある一方、数多くの“リアル”も待ち受けています。ここでは、家族で移住した際に実際に感じた6つのリアルと、それに対応する心構えや考え方、本音を徹底解説します。この記事は、他国の移住事情にも通じる部分があるため、家族や自分自身の移住判断の参考になれば幸いです。

1. 日本の社会保障を失うという現実

日本国内で享受できた安心感とその代償

海外移住を決めると、住民票を抜くことで日本が提供してくれていた医療、教育、生活保護といった社会保障制度の恩恵は受けられなくなります。日本では、3割負担での医療費や、公立校がほぼ無料で通える教育環境、子ども手当など、多くの安心材料がありました。しかし移住後は、これらの公共サービスが全く期待できなくなるのです。たとえば、急な病気やケガ、予期せぬ医療費の負担など、常に不測の事態に備えた資金計画が必要となります。

実体験から学んだ心構え

実際にタイ・バンコクに移住した家族は、現地の医療レベルが高いことや、万全の保険で補える環境に安心感を覚えるものの、日本ながらの自動的な健康診断通知や政府からの各種給付金の存在を実感すると、不思議な物足りなさと不安に襲われる瞬間もありました。移住にあたっては、まず自分たちが抱えるリスクを正確に把握し、長期的に安心して生活するための自己防衛策（十分な貯金・安定した収入源の確保）を準備することが重要です。

2. 日本的な生活費の維持と物価の実情

タイの物価と家族での生活費の現実

「海外だから生活費が大幅に浮く」というイメージは、よく聞かれるものですが、実際には家族全員が日本と同じライフスタイルを求めれば、食材や生活必需品の選び方によっては、思った以上の生活費がかかることもあります。安いカオマンガイやタイラーメンの価格は参考になりやすいものの、子どもの成長期に必要なオーガニックや安全性の高い食品、そして質の良い日用品や教育関連費は、日本並みまたはそれ以上になるケースも少なくありません。

実際の費用感を数字で見る

以下は、家族でタイ・バンコクに移住した場合の一般的な生活費の一例です。なお、各家庭の価値観や生活スタイルにより変動しますので、あくまで一つの参考情報としてご覧ください。

生活水準を保つための選択は家庭ごとに異なります。家族で話し合い、どの部分に日本と同じクオリティを求めるのか、どの部分で節約できるのかを前もって整理しておくと、移住後の生活の安定に繋がります。

3. 子どもの日本語環境の変化

現地学校での言語環境の影響

タイ・バンコクのインターナショナルスクールは、現地や世界各国から集う生徒が多く、教育は英語中心で行われるため、日本語や漢字に触れる機会が激減します。日本で育った子どもにとって、日常的に母国語に触れられない環境は将来的な日本語能力低下を招く可能性があり、家庭内での工夫が必要です。

家庭でできる対策と実践例

現地では、子どもが日本語を使う機会が少なくなるため、保護者が積極的に日本語の時間を設けることが大切です。例えば、夜の読み聞かせの時間や、週末を利用して日本語のプリントや教材に取り組むことが挙げられます。実際に、バンコク在住の家庭では、日本大使館等が提供する教科書を用いて、家族で一緒に学ぶ取り組みが行われています。これにより、日常生活の中で日本語力を維持しつつ、英語力も同時に養うバランスの良い環境を目指すことが可能です。

4. 海外駐在員との環境格差とその本音

駐在員家庭との違いを実感する瞬間

タイ・バンコクは在住する日本人が多い地域ですが、その中には企業駐在員として会社の厚遇を受けながら暮らす家庭も存在します。駐在員の場合、家賃、医療保険、通学費、さらには家庭スタッフの支援まで、会社から支給されるケースが多く、費用面やサポート体制で大きな違いがあります。一方、個人で移住を決断した家庭は、すべて自費での対応になるため、細々とした手続きや金銭負担が重くのしかかることも実情です。

環境格差にどう向き合うか

こうした現実は、時に自分たちの選択に対する後悔や焦りを感じさせる要因となります。しかし、重要なのは「自分たちは自ら選んだ道を歩んでいる」という意識です。併せて、他家庭と単純に比較するのではなく、自分たちのペースと価値観で生活していくことが大切です。移住先での苦労や不便さも、自立した生活を送るためのプロセスと捉え、日々の小さな成功体験を大切にすることで、心の安定へと繋がります。

5. 子どもの通う学校で出会う現地富裕層の現実

環境に潜む文化的・価値観のギャップ

インターナショナルスクールでの出会いは、子どもたちにとって多様な文化や価値観に触れる貴重な機会です。しかし、中には、現地の裕福層や企業駐在員の子どもたちと共に学ぶことで、親としては自分の家庭環境と大きなギャップを感じることもあります。学校や習い事、さらには子どもの遊び場においても、富裕層のライフスタイルやサポート体制は、日本ではあまり見られない現実として衝撃的に映るでしょう。

子どもと向き合うための工夫

こうした環境下では、子どもが「自分には何ができるのか」「どういう環境であっても家族が一丸となっている」という意識を持つことが大切です。実際、ある家庭では、子どもが「お手伝いがある環境」との違いを口にすることがあったり、家庭の事情に対し誇りを持つように教育されたりしています。親としては、子どもに対して「お金や環境だけには左右されない、自分たちの強みや家族の絆」をしっかりと伝えることが求められます。

6. 親が自ら行動しなければ広がらない現地コミュニティ

言語の壁と社交の現実

海外移住すると、子どもは学校や公園で自然と友達を作る一方、親同士のコミュニケーションは思いのほか難しいものです。現地の学校や地域コミュニティでは、積極的に自発的にネットワーキングを図らなければ、親同士の交流の場は限られがちです。特に英語や現地語に自信がない場合、隣人や保護者とのコミュニケーションに苦労する場面が多く、自ら行動を起こす意識が求められます。

実践するコミュニティ作りの方法

現地での社会的ネットワークを構築するためには、以下のような取り組みが効果的です。
・定期的な地域イベントへの参加や、学校の保護者会で積極的に意見交換をする
・共通の趣味や子育ての悩みを共有できるママ友、パパ友を作るために、SNSや地域のグループに参加する
・英語やタイ語の勉強会に参加し、言語の壁を乗り越えるとともに新たな出会いの場を広げる

これらの取り組みを通じて、単に情報交換をするだけでなく、困った時に支え合える本物のコミュニティを形成していくことが、移住後の生活における大きな安心材料となります。

移住前に準備するべき「自分の軸」と家族の目的

移住を決断する理由の再確認

移住に苦労が伴うのは当然ですが、何より大切なことは「なぜ移住を決めたのか」という根本的な目的意識を忘れないことです。例えば、「日本では味わえなかった異文化体験と新たな教育環境を子どもに経験させたい」「自分自身が新しい挑戦を通して成長したい」といった明確な理由があるなら、どんな困難も乗り越えることができます。移住前に家族でしっかりと話し合い、自分たちの中にその目標や目的を確立することが、心の支えとなります。

目的意識がもたらす精神的な支柱

実際にタイ・バンコクに移住して生活していく中で、さまざまな困難や予期せぬトラブルに直面することは避けられません。しかし、どんな時も「なぜこの国、この生活を選んだのか」を振り返ることで、前向きな気持ちを保つことができます。家族全員でその目的や理由を共有し、困難に直面した際には一緒に話し合い、再度気持ちを整理する時間を持つことが、移住生活の成功の鍵となります。

まとめ：家族で創る現実と未来

タイ・バンコク移住は、決して夢物語だけではなく、現実の厳しさや困難と隣り合わせの生活でもあります。日本の社会保障が失われ、現地の物価や子どもの教育環境、そして同じ日本人であっても駐在員との環境の違いに戸惑うことも多いでしょう。しかし、そんな中でも家族全員で目的を共有し、自分たちの軸を持ち続けることで、困難もまた貴重な経験となり、豊かな人生へと繋がっていくのです。

家族で海外移住を決断する際は、ただ単にキラキラとした理想だけでなく、現実の課題や心構えもしっかりと把握し、準備を重ねることが大切です。そして、どんな困難も乗り越えられる自分たちの強さと、家族の絆を信じて新たな生活に挑む姿勢こそが、真の移住成功の秘訣です。

タイの優しい気候、異文化交流の楽しさ、そして、新しい環境での学びや出会いは、確実に家族にとってかけがえのない宝物となるでしょう。もし移住先としてタイ・バンコクを選ぶなら、今一度、家族全員でその理由や目標を再確認し、どんなときも初心を忘れずに前向きに生活していくことをおすすめします。

この6つのリアルな現実と、それに対抗するための心構えや具体策を理解することで、移住後に生じる不安や悩みも乗り越える準備ができるはずです。家族一人ひとりがしっかりとした目的意識を持ち、大切な「家族」という軸を中心に生活を再構築することが、新たな環境での成功へと繋がります。

タイ・バンコクでの生活には、もちろんチャレンジも存在します。しかし、その一方で、心が豊かになり、国内では経験できなかった新たな価値観や人との繋がりが、毎日の生活に彩りを与えてくれることでしょう。移住による不安や困難も、前を向いて一歩一歩進むことで、やがて大きな自信と充実感へと変わっていきます。

皆さんがどんな環境に向かおうとも、家族という大切な絆を持ち続け、自分たちの生活の目的をしっかりと見据えながら、新しい世界に飛び込んでいけることを心から応援します。タイ・バンコク移住が、皆さんにとって素晴らしい未来への一歩となりますように。