南アフリカ原産で古くから愛飲されているルイボスティーは、アスパラサス・リネアリスという植物の葉から作られるハーブティーです。独特の甘い香りとカフェインを含まないことが特徴で、健康志向の高い人々の間で世界的に人気が広がっています。抗酸化物質が豊富に含まれており、心臓病や糖尿病の予防、脳機能の向上にも良い影響を与えるとされてきました。
乳がんと女性ホルモンエストロゲンの関係
乳がんは女性のがんの中で最も多く、特にエストロゲンに影響を受けるタイプの乳がんが多いことが知られています。エストロゲンは女性らしさを育む重要なホルモンですが、乳がん細胞が存在する場合、その成長を促進してしまうことがあります。そのため、乳がん治療ではエストロゲンの作用を抑える薬が一般的に使用されています。
南アフリカ・スタレンボッシュ大学の研究概要
スタレンボッシュ大学の生化学者チームは、ルイボスティーの抽出物が乳がん細胞に及ぼす影響を調査しました。細胞培養実験の結果、ルイボス抽出成分はエストロゲンが細胞に送る増殖シグナルを弱め、乳がん細胞の増殖速度を抑えることが確認されました。
特に注目されたのはERβ受容体
エストロゲンには主にERα(アルファ)とERβ(ベータ)という2種類の受容体があります。ERβは腫瘍の増殖を抑制する方向に働くとされており、この受容体にルイボス成分が強く結合して活性化させることが見受けられました。これは、ルイボスが乳がん増殖を止める可能性を示しています。
標準治療への干渉なしを確認
さらに重要な点は、ルイボス抽出物が乳がん治療薬タモキシフェンの働きを妨げないことを確認したことです。これにより、治療中の患者も安心して日常的にルイボスティーを摂取できる可能性が高まりました。
ルイボスティーに含まれる健康成分とその効果
ルイボスティーはポリフェノールの一種であるアスパラチンやノトファギンなど、多様な抗酸化物質を含みます。これらは細胞の酸化ダメージを防ぎ、免疫機能の強化や血糖値の安定に寄与することが知られています。特にカフェインを含まないためカフェイン過敏症の方や妊婦でも比較的安心して飲めるのも魅力です。
乳がん治療とルイボスティーの今後の研究展望
今回の研究は細胞レベルでの初期段階の結果であり、ルイボスティーが乳がんに直接治療効果を持つことを証明したものではありません。しかし、2026年に予定されている動物実験により、ルイボス成分が体内でどのように代謝されるかや、副作用の有無などをより詳しく検証することで、乳がん予防や治療サポートにおける位置づけが明確になるでしょう。
日常的な飲用の安全性の確認
ホルモン感受性の乳がん患者にとって、ホルモンに影響を及ぼす食品や飲み物の摂取は慎重に判断されるべきですが、今回の研究はルイボスティーがエストロゲン作用を弱めることでむしろ安全に飲み続けられる可能性を示しています。これは、生活習慣の一部としての取り入れやすさを後押しする重要な知見です。
日常生活でのルイボスティーの取り入れ方
ルイボスティーはスーパーや専門店、オンラインなどで簡単に手に入り、自宅で手軽に淹れられます。ホットでもアイスでも楽しめるため、季節を問わず飲みやすいのが特徴です。健康を意識したい方は、食事の合間やリラックスタイムの水分補給として積極的に活用すると良いでしょう。
注意したい点
過剰摂取による副作用は今のところ報告されていませんが、多量に摂ることは避け、バランスの良い食生活の一環として楽しむことが望ましいです。また、乳がんの治療方針や体調に応じて、医師と相談しながら摂取を続けることが推奨されます。
まとめ:ルイボスティーの新たな可能性とこれからの期待
ルイボスティーが持つ抗酸化作用や心血管疾患への効果はよく知られていましたが、南アフリカの最新研究は乳がんにおけるエストロゲン作用の抑制効果という新たな側面を明らかにしました。治療中の女性も安心して飲める可能性が示されたことで、ルイボスティーは今後ますます健康をサポートする飲み物として注目されるでしょう。
今後の動物実験や臨床研究の進展により、ルイボスティーが乳がん予防や治療サポートにどう貢献できるかがより明確になっていくことが期待されます。自然由来の食品として科学的根拠が積み重なることは、私たち自身の健康と生活の質の向上にとっても大きな前進です。


